家族で過ごした春のトスカーナ – 還暦のお祝いを込めて
- Haruko Sauzedde
- Jun 1
- 5 min read
この春、イタリア・トスカーナ(Toscane)地方へ、家族旅行をしてきました。目的は、4月生まれの家族2名の誕生日と、私自身の還暦祝い。長女はロンドンから合流し、6人での旅となりました(次女は日本から参加できず、ちょっと寂しかったけれど…涙)。

トスカーナの春は、生命力あふれる緑の風景が広がり、まさに絵画のような美しさ。移動中も助手席からの眺めに見惚れつつ、ふとこれまでの60年を振り返る、そんな時間でもありました。
トスカーナの観光プラン:6日間のモデルコース
トスカーナ旅行中の観光プランは以下の通り。家族の中は若者が多かったので、毎日とてもアクティブに動きました!
1日目:到着・チェックイン・スーパーで買い出し
2日目:フィレンツェ(Firenze)観光
3日目:リヴォルノ(Livorno)観光
4日目:サン・ジミニャーノ(San Gimignano)&シエナ(Siena)
5日目:ルッカ(Lucca)観光
6日目:ピサ(Pisa)観光(※雨天)
心に残った街々:シエナとルッカ
旅の途中で訪れた中世の街、シエナ。石畳の細道をあちらこちら気の向くままに歩いていくと、ふいに視界がひらけ、カンポ広場にたどり着きました。扇形の石畳の広場を囲むように立ち並ぶ、赤煉瓦の建物群。その美しい統一感と、あたたかみのある色合いに、思わず言葉を失いました。

広場に腰を下ろして見上げると、空に向かって伸びるマンジャの塔(Torre del Mangia)。ここで時が止まってしまったかのような静けさと重厚感に包まれて、まるでタイムスリップしたかのよう。どうやらその感覚は私だけではなかったようで、家族もそれぞれ無言で建物を見上げていました。
そしてもうひとつ、印象的だったのが、ルッカでふらりと立ち寄ったインテリアショップ。ガラス越しに見えた、どこか控えめでセンスの良いディスプレイに惹かれて入ってみると、店内には丁寧に飾り棚を整えている一人の日本人の女性がいました。その所作はとても静かで美しく、イタリアの空間と見事に調和していて、思わず胸が温かくなりました。
旅先で出会う、思いがけない日本の姿。同じ日本人として、こんなふうに異国の地で自分の感性を活かして働いている方に出会えることが、どこか誇らしく、そして勇気をもらえる瞬間でもありました。
彼女のお店で購入した麻のテーブルナプキンとナプキンホルダーは、今年の夏、我が家で大活躍しそうです。▶︎ UASHMAMA オフィシャルサイト
滞在スタイル:暮らすように旅する、Airbnbのヴィラ体験
今回のトスカーナ滞在は、カステルフィオレンティーノ(Castelfiorentino)という小さな田舎町にあるヴィラを、Airbnbでレンタルしました。高台に位置し、ブドウ畑とオリーブ畑に囲まれたロケーション。プールやテラス、バーベキュー設備もあり、まるでトスカーナに住んでいるかのような体験ができました。
最近の私の旅のスタイルは、「暮らすように旅する」こと。3泊以上の滞在では、ホテルよりもアパートや家を借り、現地のスーパーで食材を買い、簡単な食事を作るのが定番になっています。外食続きで胃が疲れることもありますし、何よりも「現地の暮らし」を感じられるのが、何とも楽しいのです。
朝はアラームをかけなくても、鳥のさえずりと、遠くでかすかに聞こえる鐘の音で自然に目が覚めました。窓を開けると、オリーブの木々の向こうに朝霧が立ちこめ、まだ眠っている村の景色がゆっくりと目を覚ましていくのが見えます。
私は早起きなので、まずはキッチンで淹れたてのダブルエスプレッソを片手にテラスへ出て、石畳のひんやりとした感触を足の裏に感じながら、静かな朝を味わう―それが毎日の始まりでした。
朝食は、近くのスーパーで買ったフレッシュな果物とパン。正直、パンの美味しさはフランスには及ばないかもしれませんが、不思議と身体に染み込むような優しい味わいがありました。朝はそれぞれ気ままに過ごし、昼前から観光へ。夕方はヴィラに戻ってのんびりと過ごすのが、自然と日課になっていきました。
特に心に残っているのは、夕暮れのひととき。オレンジ色に染まった空の下で、家族と交わすアペリティフ。お気に入りだったのは、地元のスーパーで見つけた微発泡の赤ワイン「ランブルスコ(lambrusco)」。軽やかで少し甘みのあるその味わいは、夕暮れ時の空気とぴったりと調和して、旅の高揚感をやわらかく包み込んでくれました。
バーベキューの炭の香りが漂うなか、お腹が空いてくる時間。誰かが「今日は何が一番楽しかった?」と問いかけ、自然と笑い声が広がっていく――そんな些細なやりとりが、家族の温もりとして心に残っています。
旅行というよりも、「ここに住んでいた」という不思議な感覚。旅を重ねてきた今だからこそ、この「暮らすように旅する」スタイルが自分にいちばんしっくりくる気がしました。
還暦を迎えて思うこと
今回の旅は、家族に囲まれて迎える賑やかな還暦祝いとなりました。
60年という月日を振り返ると、まるでひとつの長い旅をしてきたような気がします。長いようで、あっという間だった道のり。遠回りも、寄り道も、立ち止まった日々も、すべてが今につながっていると感じます。若い頃の自分には想像もつかなかった「今ここにいる私」。

昨年は、同期の親しい友人を2人も失い、非常に悲しく切ない思いでした。そして今年に入り私自身も、喘息の悪化で呼吸困難に陥る怖い経験をしました。だからこそ、この60歳という節目を無事に迎えられたことが、奇跡のように思えたのです。
今までは、「また来よう」と思っていた旅先も、今は「この瞬間を大切にしよう」と感じるようになりました。笑い合い、語り合い、美しい風景に感動する時間を、これからも一つずつしっかり心に刻んでいきたいと思います。
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